シトロエンC3と言えば、その奇抜なスタイルと、乗り心地がよく話題になりますが、私は、エンジンもなかなかの「優れもの」だと思っています
びっくりするようなパワーや、鋭い加速がある訳ではなのですが、粘り強いエンジンは、思わずニンマリするような、登坂力や加速力を味わせてくれます
このエンジンは、PSA(プジョーシトロエングループ)で開発された「3気筒1.2ℓターボ」で、グループのほかの車種にも搭載されています
名前は「ピュアテックエンジン」で、欧州のインターナショナルエンジンオブザイヤー(1.0~1.4L部門)を、2015~2018年まで4年連続で受賞しています
ちなみに、2019年以降は「排気量別部門」から「出力別部門」に変わってしまいました
エンジンスペックは、次のとおり
1.2Lピュアテックターボエンジン
・排気量 :1199cc
・最高出力 :110ps/5500rpm、
・最大トルク :205Nm/1500rpm
・圧縮比 :10.5
・内径✕行程 :75mm×90.5mm
カタログスペックは大したことないんですが、軽量ボディと相まって、2.0Lエンジン以上に、グイグイ加速します
ある評論家さんの、試乗リポートでは・・
「実際に走らせると想像以上にトルクフルで、発進時などの超低回転域でも、モリモリと力が湧いてくる感覚があり、力強くボディを押し出していく」、だそうです
「それも、ガツンとした急な動きはなく、最初はジワリと優しく背中を押しつつも、頼もしい」とか・・(私も、そう思います)
この評論家さんの話では、欧州仕様のMT車だと、0-100km/h加速が「10.9秒」、最高速は「188km/h」らしいです
この「ピュアテックエンジン」、調べてみると、現行エンジンになるまでに、いろいろと変遷があったそうです
それは、先代C3(二代目)に遡ります
当初、二代目C3に搭載されていたのは、最高出力120psの1.6L4気筒エンジンでした
BMWと共同開発した「プリンス」という名前のNAエンジンで、これに4速ATが組み合わされていました
160Nmの最大トルクを、4,250rpmで発生するエンジンは、低回転域からの加速性がよく、特に、3,000rpmの手前からは力強かったそうです
その後C3には、新開発の1.2Lエンジンが、搭載されることになります
PSAが、次世代を担うエンジンとして開発したもので、「無段階可変バルブタイミング」や「容量可変式オイルポンプ」などの、最新技術が取り入れられていました
BMWと、同じような機能ですね
そして、この時から「ピュアテック」という名前が使われるようになりました
新型エンジンの最高出力は「82ps」、 最大トルクは「118Nm」
スペック的には、従来の1.6Lから大幅ダウンしているのに、実際には、とても良く走ったとのこと
可変バルブタイミングなどにより、中低速域でのトルクがアップしたことと、3気筒化でエンジンが軽くなったのも、走りに貢献したんでしょうね
また、3気筒化によってフリクションロスが減って、静粛性や耐久性も向上したとか
「何も言われないで乗ったら、4気筒と思ってしまうような印象」だったらしいです
ちょっと、乗ってみたくなりますよね(ゼニスウィンドウにも興味あるし・・)
アイドリングストップ機構の採用もあって、燃費も「JC08モード」で19.0km/Lと、従来モデルより57%も向上させたとか・・(まさにダウンサイジングのお手本です)
やっぱりクルマは、エンジンスペックだけでは語れません!
ついでといっては何ですが、この時トランスミッションも、「ETG5」というのに変更しています
「ETG」というのは、「エフィシェント・トロニック・ギアボックス」の略ですが、要は、オートマチックモード付きの、シングルクラッチ5速MTってことですね
評判悪かった4ATや、これまでのシングルクラッチよりはマシだったようですが、それでも発進時は、丁寧に走り出す必要があったようです
そして現行C3(三代目)に搭載されたのが、冒頭の「1.2L ピュアテック3気筒ターボエンジン」という訳です
こうやって「シトロエンC3」の歴史を振り返ると、今のエンジンは、過去に何度も改良を加えながら、進化してきたものだったんですね
元々、中低速トルクを重視したエンジンに、ターボチャージャーを付けた訳ですから、そりゃ低速トルクがアップする訳です
大袈裟に言うと「ディーゼル車に乗ってる?」と思うほど・・
でも、思ったより爽快感もあるんですよね
そう感じるのには、現行C3から採用された、「アイシン製の6速AT」が大きく影響しているんだと思います
このAT、1速からすぐ2速に変わるので、出だしはおっとりしているのですが、そこからは、2000回転ぐらいをキープするようなセッティングになっています
普通に走る(Sモードにしない)と、シフトアップ回転数は、2,500回転ぐらい
いま流行りの多段AT車のように、どんどんシフトアップしないんです
たぶん、スピードで制御されていると思うのですが、巡航でアクセルを緩めても、上のギアに入らないので、再度アクセルを踏むと、キックダウンせずに加速を始めます
これがまた、いいんですよね!
太いトルクを活かして、そのままグイグイ加速していく感じが、いい!
高速道路だと、6速/2,000回転で大体100km/hなんですが、そこからアクセル踏んでも、5速に入らずに、そのまま加速を始めます
低速トルクがあるんだから、燃費重視のセッティングにしてもいいと思うのですが、あえてそうしないところが、「シトロエンC3」らしい!
その代わり、多段ギアのクルマのようにスムーズじゃないので、乗る人によっては、扱いにくいと感じる時があるようです
ビンビン回す「コンパクトスポーツ」とも違うし、ディーゼルエンジンを積んだ「コンパクトクルーザー」でもない
いろいろと私が表現するより、とにかく、乗ってもらうのが一番早いですかね
ちなみに「シトロエンC3エアクロス」や「シトロエンC4」に搭載されているピュアテックエンジンは、更にパワーアップ(130PS、230Nm)しており、燃費も良くなっています
今回、ピュアテックエンジンを調べているうちに、何だか3気筒エンジンに興味が湧いてきました
一般的にガソリン車の場合は、排気量が同じなら、気筒数の少ない方が「トルク」と「燃費」が向上するんだそうです
また、シリンダーの数を減らすことで、コストダウンと効率アップになるんだとか・・
気筒数が多くなると、部品も多くなるのでコストもかかるし、構造が複雑になれば、その分いろんなところで摩擦が発生して、エネルギーロスが大きいという訳です
いわゆる「フリクションロス」ってやつですね
また、エンジンがコンパクトになることも、大きなメリットだそうです
エンジンルームに余裕ができるので、ターボユニットや電子制御装置を設置することも容易になるし、クラッシャブルゾーンを大きく取れることにも繋がる
エンジンがコンパクトになるってことは、車両の軽量化にも貢献します
フロントが軽くなるので、ハンドリングも良くなり、走りの楽しさにもつながる
各メーカーが、エンジンの「モジュラー設計」を進めていることも理由のひとつ
4気筒エンジンから1気筒をはずすだけで、3気筒にできるってことですね
BMWなどはまさにそれで、1気筒500㏄を基準に、3気筒は1.5L、4気筒なら2.0L、6気筒なら3.0Lという具合ですね
PSAのピュアテックも、3気筒の1.2Lエンジンの上は4気筒1.6Lエンジンですから、BMWと同じような展開をしているわけです
トヨタも同じで、新型ヤリスの3気筒1.5Lエンジンと、レクサス UXの4気筒2.0Lエンジンは、ボア✕ストロークがまったく一緒なんだとか・・
メーカーとすれば、エンジンの開発費用を抑えることができるし、リーズナブルな車両販売価格を設定することも可能になります
これだけメリットがある3気筒なんですが、4気筒よりも振動があって、一時期廃れたことがあるらしいです
3気筒って、元々偶力振動という回転振動が発生するらしく、排気量の大きい車(高級車)では、これがない4気筒が主流になりました
でも、軽自動車のように小さな排気量では、振動がそれほど大きくないのと、コストを優先するため、3気筒が主流になったんだそうです
それが近年になって、アイドリング時の不快な振動を抑える工夫(アイドリングストップの採用やエンジンマウントの改良)が進み、再び、広まってきたらしい
ちなみに、直列3気筒で起きるこの振動も、直列6気筒では全く無くなるんだとか・・
BMWの「シルキーシックス」とは、まさにこのエンジンことですね
直6にこだわる頑固なエンジン屋、BMW。こだわり続けるBMWのアイデンティティとは? (car-me.jp)より
いや~、エンジン(内燃機関)って、奥が深い!