独仏的クルマ生活

ドイツ車のような奥さんとフランス車のような私のカーライフエッセイ

#131 ホンダ「e-HEV」とは?(1)

 

ホンダ車に続々と搭載されている「e-HEV」

高速巡行時以外はモーターが主役のハイブリッドシステムですが、そもそもホンダのハイブリッドって、エンジンが主役のマイルドハイブリッドじゃなかったっけ?

それが、いつの間にモーターが主役のストロングハイブリッドになったの?

ってことで、「e-HEV」について、ちょっと深掘りしてみることにしました

ハイブリッドの種類

そもそもハイブリッドシステムにはどんな種類があるのか、改めておさらいしてみたいと思います

パラレル方式

エンジンによる走行が主体。発進時に最大の力が出るモーターの特性を活かし、エンジンが燃料を多く消費する発進・加速時にモーターでサポートする方式。従来のクルマにモーターとバッテリーなどを追加するだけのシンプルな機構。

パラレル方式

ハイブリッドシステム Honda公式サイト (global.honda)より

ホンダが初期に採用したハイブリッドシステム。構造が簡単で発電機も持たないため、スペースや重量が増加しない

 

シリーズ・パラレル方式

発進・低速時はモーターだけで走行し、速度が上がるとエンジンとモーターが効率よくパワーを分担。 動力分割機構や発電機などがあり構成は複雑。エンジンは発電機も回す。

シリーズ・パラレル方式

ハイブリッドシステム Honda公式サイト (global.honda)より

トヨタが採用するハイブリッドシステム。構造が複雑になり発電機も乗せるためスペースや重量が増加するが、効率が良く低燃費

 

シリーズ方式

エンジンを発電機の動力としてのみ使用し、モーターだけで走る方式。

動力機構そのものは電気自動車だが、エンジンを搭載しているため ハイブリッドカーの一種に含まれる。

シリーズ方式

ハイブリッドシステム Honda公式サイト (global.honda)より

日産が採用するハイブリッドシステム。構造は簡単だが発電機やバッテリーで重量が増し、高速走行の燃費効率はあまり良くない

 

ホンダハイブリッドシステムの変遷

IMA

その中からホンダが選んだのは、機構がシンプルでエンジンを主役とするパラレル方式「IMA(Integrated Motor Assist )」でした(1999年インサイトに搭載)

搭載するモーターは1つで、構造がシンプルなため軽量に作ることができ、クルマの運動性能をよくする点でも、燃費をよくする点でも有利と考えたんですね

また、エンジンパワーとモーターパワーをロスすることなくダイレクトにタイヤへ伝えるので、スポーティな走りの楽しさを味わうことができます

Honda IMA

ハイブリッドシステム Honda公式サイト (global.honda)より

主役となるエンジンにはバルブコントロール技術を核とした「i-VTECエンジン」を搭載、低燃費と力強いトルクを実現するとともに、減速時には全気筒を休止させエネルギー回生量を増加させるなど、環境性能と加速性能を高次元で両立させていました

ハイブリッドシステム Honda公式サイト (global.honda)より

 

SPORT HYBRID i-DCD

「IMA」をさらに進化させ、コンパクトクラスに最適なハイブリッドとして開発したのが「i-DCD(Intelligent Dual Clutch Drive)」でした(2013年フィットに搭載)

いままでのパラレル式ハイブリッドに高出力モーターと7速DCTを組み合わせ、クラストップレベルの燃費性能と力強い加速を実現しました

発進時や市街地クルーズなどモーターが得意な領域は、クラッチがエンジンを切り離すことでモーター走行を行います(EVドライブモード)

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大きな駆動力を必要とする加速時や登坂時は、クラッチをつなぎモーターとエンジン両方の駆動力を使って力強く走ります(ハイブリッドドライブモード)

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高速クルーズなどエンジンで効率良く運転できるシーンでは、エンジンのみの駆動力で走り、状況に応じて余った出力で発電を行います(エンジンドライブモード)

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「IMA」と「i-DCD」の大きな違いは、エンジンとモーターが切り離されたことです

クラッチ制御によって、発進時や低速クルーズはモーターのみ、加速・登坂時はエンジンとモーターの両方、高速クルーズはエンジンのみの走行が可能になり、より効率的な走りが実現できるようになりました

SPORT HYBRID SH-AWD

「クルマはハンドルを切って曲がる」というのが長年の常識だったわけですが、後輪の左右駆動力を使って(オール操作でボートが曲がるのと同じように)、より楽に、安定して曲がろうって言うのが、SH-AWD(Super Handling All-Wheel-Drive)技術です

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ホンダは1990年代からこの研究と開発を進め、2004年には電磁クラッチとギアによって、前後左右輪の駆動力配分を行う世界初のシステム「SH-AWD」を開発し、レジェンドに搭載しました

この技術を「i-DCD」に応用したのが「SPORT HYBRID SH-AWD」というわけです(2014年レジェンドハイブリッドに搭載)

このシステムは、後に2つのモーターを用いることで、駆動力(プラスのトルク)と減速力(マイナスのトルク)の左右配分をも可能にし、それまで加速旋回時だけであったトルクベクタリングを減速旋回時にまで拡大し、あらゆる走行状況で理想的な走りを実現しました

左右の後輪の駆動力をコントロールして、優れた回頭性やライントレース性能、コーナリング中や脱出加速時の姿勢を安定させます

四輪駆動ハイブリッドシステム Honda公式サイト (global.honda)より

ちなみに、この技術は「レジェンド」と「NSX」に採用されましたが、いまは両車とも販売が終了しています

SPORT HYBRID i-MMD(現在のe-HEV)

フィットに搭載された「i-DCD」はコンパクトカー向けのユニットですが、それよりも大きいクルマ向けに開発されたのが「i-MMD(Intelligent Multi Mode Drive)」です(2013年アコードハイブリッドに搭載)

「i-DCD」と違う点は「駆動用モーター」に加えて「発電用モーター」が搭載されていることです

「駆動用モーター」は駆動軸と直結、「発電用モーター」はエンジンと直結されているため、トヨタのような動力ミックスは行いません

この「i-MMD」は発進時や低速クルーズ時だけでなく、走行のほとんどをモーターで駆動し、高速クルーズ(概ね70km/h以上の低負荷走行時)だけエンジンで走行します

バッテリーと発電機の電力でモーター走行するのは「シリーズ方式」にも似ていますが、高速クルーズはエンジンの駆動力で走るので「シリーズ方式」とは違います

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エンジンとモーターの駆動領域を明確に分け、よりシンプルで、より効率よいハイブリッドシステムを目指して、変化してたってわけですね

ちなみに「e-HEV」は、ハイブリッドカーを意味するHEVに電気の「e」を付けて、電気感の強いハイブリッドカーだという意味合いを持たせているんだそうです