この前、2022年度「新車販売ランキング」の記事を書きましたが・・
今回は、2022年度「新車販売台数(軽商用車部門)」を紹介したいと思います
「軽商用車」と言っても・・
「どこが何を販売しているか全く知らない」&「そもそも商用車なんかに興味がない」
わけですが、「乗用車」に負けないぐらい売れてるモデルがあるし、「販売環境」も独特なので、今回取り上げてみることにしました
軽自動車協会のデータをみると、軽商用車は「トラック」「キャブオーバーバン」「ボンネットバン」の、3つに分類されています
2022年度の販売台数は「トラック」が約17万台、「キャブオーバーバン」が約21万台、「ボンネットバン」が約3万台、といった具合です
「キャブオーバー」とは、エンジンの真上(オーバー)に、運転席(キャビン)があるクルマのことで、「トラック」は基本的にこの構造になっています
【キャブオーバータイプの軽トラック:スズキ・キャリー】
積載スペースを最大限確保出来るため、特に「軽トラック」にとっては、とても効率的なボディ構造と言えます
ただ、前方の「クラッシュゾーン」がほとんどないため、衝突安全性に課題があると言われています
「トラック」と同じキャブオーバー構造で、荷台と運転席が繋がっているクルマ(ワゴンタイプ)を「キャブオーバーバン」と呼びます
【キャブオーバータイプのワゴン:スズキ・ハイゼットカーゴ】
これに対して、エンジンが運転席より前にあり、いわゆる「ボンネット」があるワゴンタイプを「ボンネットバン」と呼びます(軽乗用ワゴンと同じ構造)
【ボンネットタイプのワゴン:ホンダ・N-VAN】
積載効率は「キャブオーバーバン」より落ちますが、その分、衝突安全性は高くなります
「軽商用車」の説明はここら辺にして、さっそくランキング発表に移りましょう!
まずは、一番売れている「キャブオーバーバン」から・・
1位:ダイハツ「ハイゼットカーゴ」 98,839台
2位:スズキ「エブリイ」 60,394台
3位:日産「NV100クリッパー」 26,362台
4位:トヨタ「ピクシス」 8,524台
5位:三菱「ミニキャブバン」 4,686台
6位:マツダ「スクラムバン」 4,458台
7位:スバル「サンバーバン」 4,394台
1位はダイハツのハイゼット、2位がスズキのエブリィで、何と!この2台で全体の3/4以上を占めていますが、実は3位以下も、全部この2台の「OEM車」なんです!
それぞれ名前は違えど、製造はダイハツとスズキが行っているでで、実質はダイハツ「ハイゼット」が111,757台、スズキ「エブリィ」が95,900台売れてるってわけです
以前は、ホンダも「商用バン」を販売していましたが、2018年に販売終了してしまったため、「キャブオーバーバン」市場は、ダイハツとスズキの2社独占となってしまいました
【ホンダアクティ・バン】
ただ、「ボンネットバン」の販売ランキングを見てみると・・
1位:ホンダ「N-VAN」 32,376台
2位:スズキ「スペーシアベース」 10,545台
3位:スズキ「アルトバン」 78台
ホンダ「N-VAN」が、2位のスズキ「スペーシア」に大差をつけて1位になっています
ただ「商用バン」という括りでは、ダイハツとスズキがこの3倍以上売っていますから、やっぱり2強の構図は変わらない、と言えますね
そのダイハツ「ハイゼット」とスズキ「エブリィ(キャリー)」のライバル関係は古く、1960年代から互いに進化し続け、道具クルマとして絶大な人気を誇っています
【初代エブリィ:スズライトキャリーバン1964】
現在、この2台の積載能力・動力性能・使い勝手・価格帯には、ほとんど差がありませんが、2021年にフルモデルチェンジしたばかりのハイゼットが、安全装備や走りの上質さで、一歩リードしているとのこと
「商用バン」と言えば働くクルマですが、最近はキャンパーの人気も高く、快適装備や色、アクセサリーも充実しているそうです
次は「トラック」の販売ランキングです
1位:ダイハツ「ハイゼットトラック」 89,406台
2位:スズキ「キャリイ」 55,462台
3位:日産「NT100クリッパー」 8,205台
4位:トヨタ「ピクシス」 4,762台
5位:スバル「サンバートラック」 4,163台
6位:三菱「ミニキャブトラック」 2,999台
7位:マツダ「スクラムトラック」 1,976台
8位:ホンダ「アクティトラック」 388台
このジャンルも、ホンダ以外は、実質ダイハツ「ハイゼットトラック」とスズキ「キャリー」の2大グループが占めています
ダイハツ「ハイゼットトラック」グループが98,331台、スズキ「キャリー」グループが68,642台、ホンダ「アクティ」が388台となって、99.8%をダイハツとスズキの2社で販売しているわけです
ここでお気づきでしょうか?
ダイハツはOEMを含むと「ハイゼットカーゴ」で111,757台、「ハイゼットトラック」で98,331台を販売しており、その合計は、な・な・何と210,088台になります
2022年度、日本で一番売れたホンダ「N-BOX」が204,734台ですから、その数字を上回っているわけです
いやいや、軽自動車市場って面白い・・ってか、特異的過ぎます!
なんで、こんな構図になったのか?、
その理由は・・ひとえに「軽商用車は、薄利多売だから」
軽商用車の販売価格は、大体100万円前後から始まりますが、この価格では大量生産でコストを下げなければ、利益を出すことができません
なので、売れない(利益が出ない)メーカーは、徐々に市場から撤退していきました
では・・撤退したメーカーが、なんでOEM車を売り続けるのか?
それはひとえに、顧客を逃がさないため!
軽商用車を買っていた顧客が、新車に乗り換えようとしても、販売するクルマがなければ、他のメーカーに行ってしまいます
ディーラーにとって顧客を逃すということは、商用車以外のクルマを、販売するチャンスも逃すことにもなるわけです
また田舎では、ディーラーの数も限られています
特に農業が盛んなエリアでは「軽トラック」の需要は高く、この顧客を囲い込むためには「軽トラック」の取り扱いをすることは、非常に重要なわけです
最近は「軽トラック」に乗る人も高齢化が進んでいて、「運転支援」や「衝突安全装備」がしっかり付いてるかどうか、が重要なんだとか・・
なかなか値段を上げられないジャンルだけに、益々利益が取りにくくなりますね