前回からのつづきです・・
1、ラジアルタイヤの語源となった構造とは?
20世紀半ばに開発された「ラジアルタイヤ」は、斜めのコードを格子状に重ねた「バイアスタイヤ」とは違い、進行方向に対して90°にコードを並べたカーカス構造でした
これによってコードが擦れ合うこともなくなり、転がり抵抗を大きく減らすことができたわけです
ちなみに「ラジアルタイヤ」のコードを横から見ると放射線状に見えるので、「ラジアル=放射線状」タイヤと言うんだそうです
【 公式】RIDERS CLUB(ライダースクラブ) (ridersclub-web.jp)より
普通は「パラレル=平行」とか「ラダー=梯子」と言いたいところでしょうが、ネーミングが今一歩だんでしょうか・・
ただ、放射線状のコードだけでは十分な強度を得られないことから、トレッド部分に頑丈なスチールベルトを巻きつけることにしました
昔「スチールラジアルタイヤ」なんて言ってたのは、このことだったんですね
これによってトレッド部分(路面に接地する部分)は硬く、サイドウォール(タイヤの側面部分)は柔らかいタイヤが出来上がりました
ラジアルタイヤの構造と特徴 - ヨコハマタイヤ情報サイト (y-yokohama.com)より
2、ラジアルタイヤの特徴(メリット)とは?
トレッド部分が強化されたことでタイヤの耐久性も格段に向上し、変形しにくくなったことで操作性が良くなりました
高速走行のカーブなどで、タイヤに大きな負荷がかかった時は、柔らかいサイドウォールがスプリングのように変形することで、トレッド部分が常に路面に接地するようになり、高速走行時のグリップ性能と乗り心地が良くなったのです
ただ「ラジアルタイヤ」にも欠点がありました
それはサイドウォールの強度が低いため、横からの衝撃に弱いことでした
そこでサイドウォール部分を狭く(扁平に)して出来るだけ変形部分を減らし、強度を少しでも上げる方法がとられました
日本グッドイヤー 公式サイト (goodyear.co.jp)より
それまでの「バイアスタイヤ」の扁平率は90~100だったそうですが、「ラジアルタイヤ」の扁平率は最低(最高?)でも70だそうで、今じゃ50~60は当たり前、スポーツカーに至っては扁平率30なんていうのもあるそうです
扁平タイヤって言うのは、グリップ性能を上げたり、見た目をカッコよくするためだけじゃなかったんですね
ただ「ラジアルタイヤ」のサイドウォールは「バイアスタイヤ」ほど剛性があるわけではないので、横からの衝撃にはやはり注意が必要です
3、バイアスタイヤからラジアルタイヤへ
「ラジアルタイヤ」は「バイアスタイヤ」より製造が難しいことから最初は値段も高かったのですが、その操作性と耐久性の良さが浸透するにつれて価格も下がり、いまでは乗用車のほぼ100%が「ラジアルタイヤ」になっているそうです
ちなみに初めて商用タイヤとして開発販売された「ラジアルタイヤ」は「ミシュランX」
空気入り自動車タイヤを初めて開発したのもミシュラン、「ラジアルタイヤ」を初めて開発販売したのもミシュランだったんですね
その頃の日本は、まだ未舗装道路が多く「バイアスタイヤ」が主流でしたが、1970年代になると次々と高速道路が開通し、一般道路の舗装化も進んでいきました
1980年代に入ると「ブリジストン」「ダンロップ」「横浜ゴム」の熾烈なタイヤ競争により、一気に「ラジアルタイヤ」化が進んだそうです
4、バイアスタイヤはどこへいったのか?
さて「ラジアルタイヤ」が産まれて60年、ほとんどのクルマに「ラジアルタイヤ」が装着されるようになりましたが、「バイアスタイヤ」はどうなったのでしょうか?
ちなみに「バイアスタイヤ」には次のような特徴(メリット)があります
・斜めに張り合わされたカーカスによってタイヤ全体が同じような強度になる
(あらゆる方向からの衝撃に対応できる)
・タイヤ全体がたわむことでショック吸収することができる
(低速走行や悪路での乗り心地がよい)
・タイヤ全体の剛性が高いので多少空気圧を下げてもタイヤが潰れない
(悪路でのグリップ向上に対応できる)
・カーカスを重ねることでタイヤ全体の剛性を容易に上げることができる
(重量のある車両、重い荷物を運ぶクルマに適している)
・構造がシンプルなため安いコストで作れる
実はこのようなメリットを活かせる車両には、今も「バイアスタイヤ」が使われています
具体的には、オフロード専用車両(オフロードバイク含む)、大型トラック(20t以上)、旅客機、農業用車両などです
これ以外にも大型バイクや軽自動車にも使われることがあるようです
「ラジアルタイヤ」について調べるつもりがタイヤの歴史まで掘り下げることになりましたが、先人のいろんな発明や工夫があるから今の快適なカーライフがあるんですね