独仏的クルマ生活

ドイツ車のような奥さんとフランス車のような私のカーライフエッセイ

#1 ヤマハMR50の想い出

地方大学はどこへ行くにも移動が大変で、とりあえず「ママチャリ」を買って用を足していたのですが、それでも何かと不便を感じていました

そんな時同じ学生寮にいたN君が「原付免許取ちゃえば?」と言い出しました

  

「う~ん、一度も乗ったことないしなぁ・・」

「すぐ乗れるって! 免許だって筆記だけだし」

彼は高校時代にバイク通学していたらしく、すでに原付免許を持っていました

「でもバイク買う金もないし・・」

「中古なら安く買えるよ!」

「そうなの?」

「乗らなくなった先輩が安く譲ってくれることもあるしね」

「へ~!?」

「あと俺の原付貸すから、空き地で好きなだけ練習すればいいよ!」

「えっ!いいの?」

さっそく寮の裏にある空き地にいって乗せてもらったのが「ヤマハMR50」でした

2サイクルエンジンの小さなオフロードバイクで、最初はクラッチの繋ぎ方が分からずエンストしましたが、何度か乗ってるうちにすぐに慣れてきました

しばらくは空き地で練習していたのですが、次第に物足りなくなって今度はキャンパスの中を走ってみたくなりました

キャンパス内は公道じゃないのですが、万が一のことを考えて人がいなくなる夜を待って走り出します

農学部へ続く舗装路は空き地と違ってスピードも出せるし、トップギアに入れることもできました

「いや~!これはメチャ楽しい!」

それからは毎晩キャンパス内を走るのですが、今度はもっと広い道を走ってみたいという欲望がどんどん沸きあがってきます

そしてある日、大学周辺の公道に出てみることにしました

「大学の周りはほとんどクルマが通らないし、夜なら誰もいないはず・・」

初めての公道に心はドキドキ・ワクワク・・

非常門から外に出ると、街灯のない道は真っ暗でバイクのライトだけが頼りです

しばらく走ると前方に赤い灯りが見えてきました

「ん、何だろう?」

近づくに連れて、赤いライトが揺れています

「えっ? なに、何!?」

警察の検問でした

初めて公道に出たとたん捕まるなんて、何というタイミング・・

私は「無免許運転」で1年間は免許が取れなくなり、バイクを貸してくれたN君にも迷惑をかけてしまいました

「君にも迷惑かけて申し訳ない・・」

「大丈夫、気にしなくていいよ」

内緒で公道を走った私を許してくれた彼は、私が晴れて原付や中型免許を取ったあともずっと「ヤマハMR50」に乗っていたと思います

地元に戻って就職したN君とはそれ以来一度も会うことはありませんでしたが、彼は今頃どうしているだろうか?

そんなことを思っていた矢先に、後輩からN君が亡くなったことを聞きました

「えっ! ホントに・・」

「1年ぐらい前らしいです」

「どこか悪かったのかな?」

「いえ、急だったみたいですよ」

お互いいい歳になってしまったけど、それでも早過ぎるだろう・・

今考えてもバカなことをした私を、笑って許してくれた寛容な友人でした