独仏的クルマ生活

ドイツ車のような奥さんとフランス車のような私のカーライフエッセイ

#29 日産シーマ・フーガが生産終了?

 

日産「シーマ」と「フーガ」の生産が、今年の夏までに終了するというニュースが流れました

youtu.be

初代シーマは暴力的な加速をする高級車として人気があり、バブル期に高級車がバカ売れするのを「シーマ現象」なんていいましたよね

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日産、バブル時代の惚れの名車『シーマ』も生産終了へ[新聞ウォッチ] | レスポンス(Response.jp)より

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「フーガ」はBMWに乗り換える前に乗っていたクルマなので、これも生産中止と聞くとちょっと寂しくなります

国産セダンの販売が低調なことは分かっていましたが、ついに高級セダンまで消えてしまうのかと思ったら・・、どうもそれだけが理由ではないらしい

搭載されているエンジンが、今年秋から強化される騒音規制をクリアできないためだと言うのです

そして「スカイライン」も、ハイブリッドモデルが生産終了になるんだとのこと

「えっ!? 騒音規制なのにハイブリッドをやめて純ガソリンエンジン車は残すってどういうこと?」

「って言うか、そもそも騒音規制って何?」

ってことで、恥ずかしながら調べてみました

騒音規制が出来たのは今から約50年前の昭和46年で、クルマの騒音によって沿道の住民が、頭痛や睡眠障害を訴えたことがきっかけでした

特にクルマが加速する際に大きな音が出ることから、いわゆる乗用車(定員6人以下の乗用車の場合)の加速走行騒音は「84デシベル(dB)」と定められました

 

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新車の車検登録時にこの基準を満たしていないと、公道を走ることができなかったわけですね

ちなみに「84dB」は救急車のサイレンと同等なんだそうですが、これでも結構うるさいですよね・・

その後この規制値は徐々に下げられて、昭和52年には「82dB」、昭和54年には「81dB」、昭和57年には「78dB」、平成10年には「76dB」となっています

そして平成28年には、国連欧州経済委員会の規定に準ずる「フェーズ1」が採用されて、乗用車(M1)は馬力と重量によって、規制値が「72~75dB」に決められました

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具体的には、PMR(パワーマスレシオ)が120以下のクルマは「72dB」、120~160は「73dB」、160超えは「75dB」と言った具合です

PMRとは、馬力(Kw)÷(車両重量+75kg)×1,000で表される数値ですから、軽くて馬力のあるエンジンを積んだクルマほど数値が大きくなります

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例えば「GT-R」なんかだと、馬力は419Kw、車両重量が1,760kgですから、PMRは419÷1,835×1,000=「228.3」となり、騒音規制値は「75dB」となります

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ちなみに、私のBMW420GCは馬力が135kw、車両重量が1640㎏ですから、PMRは135

÷1,715×1,000=「78.7」となり、規制値は「72dB」ってことですね

それにしてもPMRがGT-Rの3分の1とは、ちょっと情けない・・

さて、この加速走行騒音の規制値は、令和2年にフェーズ2に移行しています

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PMR(パワーマスレシオ)が120以下のクルマは「70dB」、120~160は「71dB」、160超えは「73dB」で、PMRが200超えの定員4人以下で座席が低いスポーツカーは「74dB」と、フェーズ1より厳しくなっています

そしてこのフェーズ1とフェーズ2の対象となるのは、国産の新型車だけだったのですが、令和4年9月からは、これ以外のすべてのクルマも規制の対象になります

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つまり平成28年規制以前に発売されたクルマ(平成10年規制クリア車)は、とりあえず規制値以上でも継続販売できたわけですが、今年の9月からはもう新規登録(新車販売)ができなくなってしまうというわけです

そして、このままだと規制値をクリアできないのが以下のクルマになります

<平成10年加速走行騒音規制76dB適合車>

・日産GT-R

・日産フェアレディZ(22年6月新型発売予定)

・日産シーマ(22年夏生産終了予定)

・日産フーガ(22年夏生産終了予定)

・日産スカイラインHEV(22年夏生産終了予定)

・日産シルフィ(21年生産終了)

・日産エルグランド

・日産エクストレイル

・三菱ミラージュ

・三菱タウンボックス

・ホンダS660(22年3月生産終了)

・ホンダオデッセイ(21年生産終了)

ホンダシャトル

・ホンダステップワゴンe-HEV(22年春新型発売予定)

・ホンダフリード

・スズキラパン

・スズキアルトワークス(新型アルトにはワークスモデル無し)

・スズキエブリイワゴン

ダイハツウェイク

ダイハツアトレーワゴン

ダイハツブーン

スポーツカーだけかと思ったら、シーマ・フーガのようなセダンやファミリーカー、そして軽自動車まであるんですね・・

これらのクルマは生産を終了するか、フェーズ2に適合した新型車を開発するしかないというわけです

「シーマ」と「フーガ」は、新型を諦めたってわけですね

メーカー公表の加速走行データを見ると、純ガソリン車よりもハイブリッド車の方が騒音レベルが高い場合が結構あります

モーターとエンジンの両方を使うハイブリッド車は静かなイメージがありますが、フル加速すると逆に大きな音が出るんですね(意外でした・・)

そして今後は現行のフェーズ2から、更に規制強化したフェーズ3に移行する可能性があるというから驚きです

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ただ国交省の資料をみると、フェーズ2規制後の状況を見た上で検討することになっており、現時点でフェーズ3にいつ移行するかは未定とのこと

でもいつかフェーズ3に移行するとすれば、自動車メーカーは更なる改良を余儀なくされるでしょうし、改良するよりモーターだけで動く電気自動車(BEV)にした方が手っ取り早いかもしれません

「カーボンフリー」よりも先に「騒音規制」でEV化が進むかもしれないとは・・さすが日本って感じですね