独仏的クルマ生活

ドイツ車のような奥さんとフランス車のような私のカーライフエッセイ

#8 EV問答「EV全盛時代は来るのか?」

前回からのつづき・・

dfcarlife.hatenablog.com

 

「今のままじゃ、すぐにEV全盛時代になるとは思えないよね・・」

f:id:dfcarlife:20210506160454p:plain

2030年の世界新車販売のうち、電動車の割合は50%を超えると予想されています

世界新車販売台数、矢野経済研究所 | レスポンス(Response.jp)より

「その電動車って、どこまでを言うの?」

電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、ハイブリッド(HEV)、マイルドハイブリッド(MHEV)です

「この中で一番売れてるのは?」

マイルドハイブリッド(MHEV)がトップで、約20%になると言われています

「BEVはどれぐらいなのよ?」

現在の約2%から2025年には7%、2030年には18%までいくと言われています

「日本はどうなの?」

日本の新車販売のうち、2030年に電動車が占める割合は55%と予測されています

その内BEVは、13%に留まっています

「じゃあ何が売れてるの?」

ハイブリッド(HEV)が23%と、もっとも多くなっています

日本はすでに新車の21%がHEVで、今後もこのシェアが続くと予測されています

「そう簡単には、HEVのシェアは崩せないってわけね」

「ちなみに2030年に電動車が55%ってことは、残りはガソリン車なの?」

44%はガソリン車が売れているという予測です

東京都は脱ガソリン車を宣言しましたが、他の地域ではガソリン車を販売できます

また東京都の宣言も強制力はなく、業界団体への要請で進めていく予定です

「な~んだ、絶対ってわけじゃないんだね」

2025年ごろにはバッテリーの価格が更に下がり、中型のBEVはガソリン車とほぼ同等の価格帯になると言われています

小型車の場合は2030年ごろまでかかると言われていますが、5年乗った場合のトータル経費や補助金などを考えると、新車を選ぶ際にBEVが選択肢に入ってくると思われます

「日本は小型車需要が多いからね」

BEV普及には消費者の購買意欲が高まることが重要です

「問題はそこだよね」

BEVを買うと、いままでBEVに懐疑的だったひとも好意的になります。

「一度乗れば、気に入るってこと?」

満足した消費者はまたBEVを買うので、更に販売台数が増えていきます。

「そうかなぁ~(^^;)」

販売台数が増えると、インフラ整備は進み、メーカーは新しいモデルを次々に発売するので更に市場が増える!

「そんなにうまく行くかね?」

「BEVはいかにもガソリン車より優れているって言い方だけど・・」

一般的に「動力性能」として挙げられる要素には、加速性、旋回性、制動性などがあります

トヨタの解説するクルマの構造や機能「走る」「曲がる」「止まる」が面白い! - Life in the FAST LANE. (intensive911.com)より

「おっ!まずは動力性能できたか・・(^^;)」

BEVはモーターの回転が直接駆動軸に伝わるので、アクセルの強弱がすぐに駆動力としてタイヤに伝わります

「アクセルレスポンスがいいってことね・・(^^;)」

またトランスミッションが存在しないので、シフトショックというものがありません

「まあね・・」

また内燃機関のように回転数が上がるに連れてトルク(押し出す力)が上がるのではなく、回転初期から最大トルクを発生します

走行性能|性能・安全|CR-V(2022年12月終了モデル)|Honda公式サイトより

「理想的なエンジン、じゃなくモーター・・」

従ってどの速度域からでも、スムーズで力強い加速を得ることができます

「う~ん・・」

赤のModel 3

Model 3 | テスラ ジャパン (tesla.com)より

テスラの「モデル3パフォーマンス」は0~100kmまで3.3秒で到達します

これはスーパーカーに匹敵する加速力で、音もない猛烈な加速は異次元の感覚です

「ううっ、乗ってみたい・・」

また重いバッテリーをキャビン下の床に敷き詰めているのため、重心が低く、前後左右のバランスに優れています

「そっか・・、重いエンジンもないしね」

自動車情報・ニュース WEB CARTOPより

重心が中央の低い位置にあることから、ハンドル操作に対する応答がよく、ロールも少ない安定した旋回を行うことができます

「制動性はどうなのよ!」

ブレーキ自体は、ガソリン車などと変わりはありません

ただ加速が良い分、相応の制動力を持ったブレーキが装着されているようです

「ふ~ん」

またBEVの場合は、回生ブレーキを使うことができます

エンジンブレーキみたいなもんだよね」

アクセルオフの際に、減速のためのパワーを使ってバッテリー充電を行う機能です

エンジンブレーキよりも強く、慣れるとブレーキを使わずに停止できます

「ワンペダル操作ってやつね」

慣れない場合は強さを調節できるので、ガソリン車から乗り替えても違和感はありません

「配慮してますな・・(^^;)」

「快適性」には、静粛性、制振性、衝撃吸収性などがあります

「こんどは快適性ですか・・」

ご存じのとおりモーターにはエンジン音というものがありません

従って、静かな車内で、会話や音楽を存分に楽しむことができます

「日産のCMのように、小鳥の声も聞こえるってわけね・・」

youtu.be

車内に入ってくるのは、ロードノイズと風切り音と外の音だけです

「いままで気にならなかった音が、今度は気になるね・・(^^;)」

ロードノイズや風切り音を防ぐ工夫をしたBEVも、すでに発売されています

またモーターには、エンジンのような振動がありません

「音もなきゃ、振動もないわけだ」

サスペンションはガソリン車と変わりませんが、BEVは重いバッテリーを積んでいる分、しっとりした重厚な乗り心地に感じると思います

またメンテナンスの手間や経費が少ないこともBEVのメリットです

「そうなんだ・・?」

BEVでは「エンジンオイルやフィルター」「ミッションオイル」「冷却水」や「プラグの交換」は一切必要ありません

車のオイル交換(エンジン)と種類|チューリッヒ (zurich.co.jp)より

「確かに、エンジンやミッションがないからね」

「でもバッテリーがダメになったらどうするのよ!」

EVバッテリーは、一般的に充電性能が70%以下になった場合に寿命(劣化した)と言われています

「そうなんだ・・」

メーカーは「一定年数か決められた走行距離に達する前にバッテリーが劣化した場合」は、無償で保証すると謳っています

「へ~」

テスラの「モデルS」および「モデルX」の場合は、8年または24万km(いずれか早い方)、「モデル3」の場合は8年または16万kmで70%のバッテリー容量を保証しています

「それはありがたいね・・」

日産「リーフ」の場合は、8年または16万km以内のどちらかで、12セグメントあるバッテリー容量が8セグメントになった場合は保証対象となります

レクサス初のBEV「UX300e」は10年、100万kmを保証対象としたことで話題になりました

「ほ~っ」

一般的な車の乗り替え期間や走行距離から考えると、所有している間にバッテリー交換で費用が発生することはないと考えられます

「なるほどね!」

EVバッテリーの寿命が来た場合には、基本的に廃車になります

交換できない訳ではありませんが、相応の交換費用がかかります

「たぶん、そこまでして乗らないね(^^;)」

EVバッテリーとしては寿命でも、蓄電能力がゼロになる訳ではありません

その後は事業用蓄電池や家庭用蓄電池として、安く再利用されることになります

EVの普及が、様々な場所でのインフラ整備に貢献することになるのです

「言うねぇ・・(^^;)」

「EVがガソリン車より優れている点が多いことは分かったけど・・」

「エンジンのサウンドや振動を感じながら運転するのがいいんだよね~」

日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)より

いま自動車は100年に一度の「変革」の時期に来ています

メーカーもそれを支えるサプライヤーも、この変革期に戸惑いを隠せません

しかし良いものは必ず普及し、一般化していきます

10年前には当たり前だったガラケースマホに取って代わられたように、10年後にはBEVが当たり前の時代になっているかもしれません

「確かに・・」

BEV普及にはさまざまな課題が残っていますが、まずはBEVに興味を持ってもらうことが普及への第一歩だと思っています

「でも、興味を持つにはまだタマ数が少ないよね」

現在日本で買うことのできるBEVは、以下のとおりです(いずれもエントリーグレード、商用車を除く)

航続距離:WLTCモード(JC08モード )

メーカー 車種名 価格 航続距離
三菱 i-MiEV 300万円 (164km)
日産 リーフ 333万円 322km
プジョー e-208 390万円 (403km)
プジョー e-2008 429万円 (385km)
テスラ モデル3 429万円 430km
ホンダ Honda e 451万円 283km
BMW i3 499万円 360km
DS DS3クロス 534万円 (398km)
アウディ eトロン 933万円 316km
テスラ モデルS 955万円 652km
ジャガー i-PACE 976万円 438km
テスラ モデルX 1,060万円 561km
ベンツ EQC400 1,080万円 400km
ポルシェ イカ 1,448万円 303km

国産では3モデル、輸入車で11モデルが販売されています。

「価格に開きがあるねぇ~(^^;)」

「それと1,000万円もするBEVは現実的じゃないよね・・(^^;)」

「i‐MiEV」から「DS3クロスバック」が、300~500万円台で購入可能です

「我々一般人は、頑張ってもこのぐらいでしょうね」

「この中でもおススメはあるの?」

カタログ上の航続距離でお買い得なのは、「リーフ」「モデル3」「e-208」というところです

「e-208」はWLTCモードでは、320km程度と想定しています

「なるほど・・」

BEVはバッテリーの電力で動くため、外気温や道路状況、運転の仕方やエアコンの使用状況などによって航続距離が変化します

江島大橋(ベタ踏み坂)島根県公式観光情報サイト (kankou-shimane.com)より

一般的には、カタログ表示の7割程度が実質距離と言われています

「そうなんだ・・」

従って最大航続距離が400kmの場合は、実際には300km弱の走行が出来ると考えた方が無難でしょう

「100km圏内を日帰りするには、カタログ表示で400kmぐらいは必要ってわけだ」

つぎに加速、最高速度をみてみましょう

BEVは元々アクセルレスポンスがよく、出だしから最大トルクを発生するので、どのモデルでも加速に関して不満を覚えることはまずありません

その中でも0-100km加速が6秒を切るモデルでは、ガソリン車のハイパフォーマンスモデル以上の加速を味わうことができます

先に紹介したように、テスラの「モデル3パフォーマンス」は、0-100km加速が3.3秒、最高速度が261km/hです

「凄いね!」

またテスラの「モデルSパフォーマンス」に至っては、0-100kmが2.5秒という驚異的な加速を堪能できます

「凄すぎて想像できません(^^;)」

テスラの場合は、走行性能だけではありません

テスラ・モデル3パフォーマンス - webCGより

ダッシュボードには、従来のメーターやスイッチ類がありません

「ハンドルはあるよね・・(^^;)」

すべての設定はダッシュボード中央にあるタッチパネルで行います

最初は違和感がありますが、慣れればスマホ感覚で操作できます

「それも試してみたくなるね」

「Honda e」や「eトロン」には従来のドアミラーがありません

「何それ?」

ドアミラーの場所に小さなカメラが付いており、左右の映像をダッシュボード両側の液晶パネルに映し出すようになっています

「それも面白いね・・」

少ない目線移動で左右の交通状況が確認できるのと、ドアミラーがないので死角が減り、安全に右左折ができるメリットもあります

「それはいいね!」

その他にも様々な最新装備が備わっているので、一度試乗されては如何ですか?

「乗ったら買いたくなるかもね!」

「でも実際に手が届きそうなBEVが、8種類しかないのはどうもね・・」

現在、世界の自動車メーカーはこぞってBEV開発を行っています

これからはBEV専用モデルだけでなく、従来モデルにもBEV仕様が追加されるでしょう!

BEVは、まだ多くの課題を残しています

充電施設の充実、充電時間の短縮、Well To Wheelの問題、脱炭素意識の醸成など、社会全体で取り組まねば解消できない問題もあります

「ニワトリが先か卵が先かってことね・・(^^;)」

また、原油からは様々な石油関連製品が生まれます

その過程で精製されるガソリンや軽油を無駄にする必要はありません

「そっか! ガソリンだけのために原油採ってるわけじゃないもんね」

ガソリン車においても、リーンバーンエンジンの研究が進んでいます

「何それ?」

 

リーンバーンとは?【自動車用語辞典:エンジン燃焼編】 | goo - 自動車より

希薄燃料で従来と同じようにエンジンを動かす技術で、大幅な燃費改善と排気ガス中のNOxやCO₂削減が期待されます

「そうなの~?」

すでにマツダやスバルが実用化しており、更に効率なエンジン開発が実現すれば、「Well To Wheel」でみるとEVに劣らないレベルまでいくとも言われています

「なんだ・・、ガソリンが全くダメな訳じゃないんだ」

HEV、PHEVも更に低燃費、高効率な車が開発されていくでしょう

燃料電池車(FCV)は公共交通機関で普及が進むと言われています

水素は水しか排出せず、また再生可能な燃料です

いまはまだ水素ステーションが少ない状況ですが、公共交通機関への普及と乗用車モデルの充実により、徐々にインフラ整備も進むと思われます

「考えてみれば、FCVはどこにもCO₂を出さないわけだ」

脱炭素社会に向けた取り組みはまだ始まったばかりです

自動車メーカーも独自の技術を活かしながら、更なる開発を始めています

10年後にはBEVだけでなく、HEV、PHEV、FCV、そして高効率でほとんどCO₂を出さないガソリン車やクリーンディーゼル車が数多く登場しているかもしれません

「そうなると選択肢がたくさん増えるね!」

再生可能な新しい液体燃料の研究も進んでいます

「そんなのが出来たら凄いよね」

BEVがきっかけとなって脱炭素社会への意識が広がれば、すべての業界で様々な変革が起きるかもしれません

「何だか大きな話になってきたね~」

~おわり~