独仏的クルマ生活

ドイツ車のような奥さんとフランス車のような私のカーライフエッセイ

#7 EV問答「EV普及には課題が多い?」

前回からのつづき・・

dfcarlife.hatenablog.com

 

「自宅で充電できればBEVを買ってもいいかなって思うけど、結構高いよね」

搭載されるリチウムイオン電池が高価なことが原因です

電気自動車のバッテリー - EVsmartブログより

一般的にはバッテリー容量(最大航続距離)で車両価格が違ってきます

テスラの「モデル3」には航続距離が565km(スタンダード)と689km(ロングレンジ)がありますが、前車は494万円、後車は579万円となっています(2022年3月現在)

「結構なお値段ですな・・」

日産リーフの場合は、航続距離が322km(X)と458km(e+X)がありますが、前車は382万円、後車は441万円といった具合です(2022年3月現在)

「う~ん、それでも高いよね」

「ガソリン車と比べるとどうなのよ?」

プジョーの新型208は、まったく同じ仕様でガソリン車とBEVを選ぶことができます

「それは、比較しやすいね」

例えば「アリュール」という中間グレードで見てみると、ガソリン車が278万円、BEVが412万円ですから、BEVの方が130万円ほど高くなります(2022年3月現在)

「結構な差があるね・・」

5年前の中型BEVでは、車両価格の半分以上がバッテリー代だと言われていました

「はぁ・・」

それが現在は、車両価格の3分の1にまでなっています

「これでも下がったんだ・・」

そして5年後には、4分の1まで下がると言われています

「へぇ~!?」

そうなるとガソリン車とBEVの価格差はほぼなくなると言われています

「そしたら検討するかも・・」

BEVを購入した人には、国から最大40万円の補助金が出ます(2020年12月時点)

これを使えば、ガソリン車よりも安く買うことができる可能性があります

「そうなると買うね、たぶん・・」

また給電機能のあるEVに対しては、一律2万円の補助金がプラスされます(2020年12月時点)

「給電機能って?」

EVから家庭に電気を供給する機能です

この機能をビークル・トゥ・ホーム(V2H)と言います

「あっ!リーフのCMでやってるやつか・・」

youtu.be

一般的な家庭の消費電力量は、1日あたり10kWh程度と言われています

日産「リーフe+」の場合はバッテリー容量が62kWhですから、家で使う電力の6日分を蓄えていることになります

「停電しても6日は大丈夫ってわけだ!」

これを拡大した電力需給の安定化構想が「バーチャル・パワー・プラント(VPP)」と言われるものです

「何それ?大袈裟な名前だね・・」

EVに蓄電されている電力を、消費電力の状況に合わせて出し入れして、発電所からの電力消費を支援しながら効率的に電力を使うという構想です

「どういうこと?」

たとえば真夏の消費電力がピークを越えるような時に、EVに溜めた電力を使うことで発電所の能力オーバーを回避することができます

「停電の心配がなくなるってこと?」

停電のとき | エネワンでんき (eneonedenki.net)より

また災害などで一時的に発電所からの電力供給が途絶えた場合も、EVに蓄電された電力で、医療現場などさまざまな支援を行うことができます

「みんなの車が、街の蓄電池になるってわけだ」

従って大都市ほどEV普及のメリットが活かされると言われています

「だから東京が全国に先駆けて!ってわけね!」

ロングドライブを安全に楽しむための体と心のストレッチ | カーデイズマガジン (car-days.fun)より

「BEVだと遠出も心配なんだよね」

最近発売されているBEVは、航続距離が400kmを越えるモデルが多くなっています

テスラの「モデル3」のように最大航続距離580kmというBEVも出ています

「ガソリン車と変わらないってことね・・(^^;)」

搭載するバッテリーの量を増やせば航続距離を伸ばすことはできますが、それではスペースや重量の増大、価格の上昇などを招きます

「それじゃ意味ないよ~」

日産「リーフ」は発売当初バッテリー容量が24kWhでしたが、電極素材の改良やバッテリーユニットの効率化により、62kWhまで容量アップすることに成功しました

「さすが技術の日産!」

テスラは2025年までに、今の1.5倍までエネルギー密度を高めたバッテリーを量産すると宣言しています

「そしたら充電なしで1,000kmも可能かもね」

「でも、ちょっと待って・・」

「バッテリー容量が増えたら、今度は充電に時間がかかるんじゃない?」

一般家庭に設置する200V普通充電器の場合、出力は3kW程度と言われています

充電時間は容量や残量にもよりますが、概ね5~8時間かかります

「まあ自宅の駐車場なら問題ないね」

高速道路のSA・PAなどにある急速充電器は、最大出力が50kWです

バッテリー容量や残量で変わりますが、30~50分で80%まで充電が可能です

「結構かかるね・・」

テスラは独自にスーパーチャージャーという急速充電器を設置しています

最新のV3は最高出力が250kWという高い充電能力を持っています

「さすがテスラ、充電器でも最先端を行ってますな・・」

近い将来、急速充電器の充電能力は、更に上がって行くと言われています

そうなると、いまの半分以下で充電できる日も近いかもしれません

ただ、BEVは自宅で充電をするのが基本的な使い方になります

ガソリン車のようにスタンドで給油(給電)するという形ではなくなります

「そうなんだ・・」

旅行に行く場合でも、途中足りなくなった分だけ急速充電で補い、目的地(宿泊先など)で普通充電することになります

「確かに皆がいっせいに公共充電器使ったら、大渋滞になるよね・・(^^;)」

リチウムイオンバッテリーはゼロから満充電することが、一番劣化を早める要因だと言われています

「へぇ~、そうなの?」

30%~80%の間で使うことが、バッテリーの蓄電能力を長持ちさせるコツです

余裕を持って、早めに充電することが肝要です

また急速充電を多用するよりも、普通充電でゆっくりと充電した方が劣化を防ぐとも言われています

「それは何となくわかるね」

BEVで遠乗りする場合には、時間に余裕を持って、無駄に電気を消費しないことを心がけ、しっかりした給電計画を立てて出かけることをお勧めします

「なんだか走りもエコになりそう・・(^^;)」

「エコと言えば、前から思ってたんだけど・・」
「BEVはCO₂を出さないかもしれないけど、発電所でCO₂出してたら意味ないんじゃない?」

BEVの普及を目指す上で、「Well (油田)To Wheel(車輪)」と言う考え方は非常に重要です

「何?それ」

文字通り、油田から石油を採ってタイヤを動かすまでの間で、どれだけCO₂を排出しているのかという意味です

日本では化石燃料による火力発電が、約8割を占めています

東日本大震災以前は約6割でしたが、原発の稼働停止に伴い増加しました

「そうなんだ・・」

このような状況でBEVが普及したとしても、「Well To Wheel」でみるとCO₂排出量削減効果はあまり上がらないと言われています

「やっぱりね・・」

日本が火力発電に依存している限りBEV普及の効果は限定的と言われており、一刻も早くCO₂排出ゼロの発電を増やす必要があります

「ちなみに世界はどうなのよ!」

国際エネルギー機関の2017年データをみると、化石燃料を使っていない国はノルウェーアイスランドです

「何で発電してるの?」

ノルウェーは水力、アイスランドは水力と地熱発電です

自然エネルギーを有効に使ってるわけだ」

他にも化石燃料をあまり使っていない国があります

「どこよ?」

スウェーデンやスイスが5%未満、フランスが1割、フィンランドも2割まで行きません

「これも自然エネルギーってわけ?」

これらの国は原子力発電が多く、スイス・フィンランドが3割、スウェーデンは約4割、フランスは約7割を原子力で賄っています

「日本はこれを目指していたんだ・・」

しかしこれらの国も、原子力発電は縮小か廃止の方向で動いています

「CO₂は出さないけど、危険性も高いからね」

危険性がない次世代原子力発電が開発される可能性もありますが、水力、地熱、風力、太陽光発電などの割合が増えていくと思われます

「なるほど・・」

これ以外に化石燃料発電が少ない国には、カナダやブラジル(約2割)、イギリス・スペイン(4割強)、ドイツ(約5割)などがあります

これらの国では、元々化石燃料を使った発電が少ないことから、EV普及によるCO₂削減効果は大きいと言えます

「逆に多い国はどこ?」

9割以上あるのが、シンガポール、イラン、エジプト、サウジアラビアです

こちらは天然ガス発電の比率が高くなっています

化石燃料がたくさんあるからね・・」

8割以上は、インドネシア、タイ、マレーシア、オーストラリア、メキシコ、オランダ、インドで、7割前後が、中国、台湾、韓国、フィリピン、トルコなどです

「アジアが多いね」

これも地下資源が多いことが影響しています

中国は石炭生産量で世界第1位、インドが2位、インドネシアは4位です

それ以外の国も石炭、石油、天然ガスなどの資源が豊富で、これら資源を活かして発電を行っているわけです

「自分の国で採れるんだから、使わなきゃ損ってことか・・」

アメリカとロシアは約6割で、世界全体の化石燃料発電の割合とほぼ同じです

どちらも化石資源が豊富で、アメリカは石油・天然ガスともに世界1位の生産国です

ロシアは天然ガス生産で世界第2位、石炭生産では第6位で、自国だけでなくヨーロッパ各国へも天然ガスを供給しています

「なんでも採れる国はいいねぇ・・(^^;)」

「ところで日本は資源が無いのに、なんで火力発電が多いの?」

日本、韓国、台湾など、国土が狭く自国に資源が少ない国は、比較的安価な輸入石炭や輸入天然ガスによる火力発電が主流でした

近年は日本と同様に、原子力発電で自前のエネルギー源を確保しようとしていたのですが、2011年の東日本大震災に伴う福島原発事故によって状況が一変しました

台湾は2025年までに原発の全廃を決定し、今後は風力と太陽光発電で補うと決めました

韓国も文在寅大統領になってから、脱原発・脱石炭へと舵を切り始めています

「そうなんだ・・」

日本の場合はエネルギーミックスを目指しています

2030年までに再生可能エネルギー原子力発電で半分近くを賄い、天然ガスや石炭、石油などの化石燃料は、現在の8割から5割強まで減らす計画になっています

「まだ原発を稼働させるんだ・・」

原子力発電は安全性の確保が大前提ですが、再生可能エネルギーなどを最大限増やすことで、その依存度を徐々に減らしていく方針です

「そこらへんをきちんと説明すればいいのにね」

化石燃料が多いほかの国はどうなのよ」

大気汚染に苦しんでいる中国やインドは、石炭発電の比率を大きく引き下げ、風力発電太陽光発電を大規模に展開する計画を立てています

インドネシアやフィリピンは、元々地熱発電の割合が高い国です

原子力発電が頓挫したこともあり、政府が大規模な地熱発電拡大計画を打ち出しています

「みんな脱炭素社会に向かって動き出してるわけだ」

つづく ↓

dfcarlife.hatenablog.com